背景:昆虫の生体防御システム

 昆虫は病原性をもつ細菌などが蔓延るような環境でも逞しく生きることができます.さらに天敵となるような寄生性昆虫からの攻撃にさらされることもあります.このような外敵の体内への侵入に対し,昆虫は強力な先天性免疫反応によって対処しています. 


研究トピック1:侵入物のサイズに応じた免疫反応制御機構の解明(古川)

 昆虫の重要な先天性免疫機構の一つである細胞性免疫は、体に侵入してきた異物の大きさに応じて貪食と包囲化という二つの異なる反応を示します。この時、昆虫がどうやって異物のサイズを認識するのか、また、どのような分子メカニズムによってそれらの反応が生じるのかはよくわかっていません。私たちのグループでは分子生物学的手法を用いて侵入物のサイズに応じた免疫反応制御機構の解明を目指しています。

 (参考: Ishihara et al. (2017) 


研究トピック2:寄生バエ類の寄主免疫回避機構の解明(古川)

 寄生バエ類は幼虫期に寄主昆虫の体内に寄生して成長し、最終的に寄主を殺して成虫になる生活史を持ちます。害虫を含む多くの昆虫にとって主要な天敵であり、生態系における捕食者としての機能は寄生バチ類と双璧をなす存在です。しかしながら、寄生する際にいかにして寄主昆虫の免疫機能を回避しているのかはほとんど明らかになっていません。そこで私たちのグループは、チョウ目昆虫に寄生する寄生バエ類を継代飼育し、飼育実験や解剖観察、免疫機能評価試験や免疫関連遺伝子の発現解析によって、寄生バエ類の寄主免疫回避機構の解明を目指しています。

 (参考: Yamashita et al. (2019); Schwier et al. (2021)